はな(@hana8family)です。
突然ですが私が今訴えたいこと、それは、
「体に不調をきたすほど無理をして学校や会社に行かないで良い」
ということです。
毎日元気に高校に通っている娘。
でも、つい3か月ほど前までは長い長い不登校生活のトンネルの中にいました。
高校に進学し何とか毎日登校できるようになったお陰で、不登校の間に経験した辛かった出来事を、ようやく今になり客観的に振り返る事ができるようになりましたので、ここに書きとどめておこうと思います。
中学に上がり最初に不登校になったのは、中学1年生の3学期。
小学校の頃にも一度3か月間の不登校を経験しているので、私自身そんなに不安になることも慌てることもなかったのですが、それよりも中学校の先生の対応に驚きました。
自家用車で朝家まで迎えに来られ、泣いて嫌がる娘を車に乗せて無理やり学校に連れていったり。
心療内科を受診して向精神薬を投与するように勧められたり。
中学1年生の3学期をまるまる休み、2年生に上がり再登校できるようになりました。
その際、学校側の配慮で仲の良い友達と一緒のクラスにしていただけたのですが、まさにその友達や部活の仲間からいじめを受けていた事が発覚。
理由は「不登校で甘えているから」でした。
それでも娘は何とか学校復帰したいと頑張って登校していたのですが、無理がたたり、本当に心療内科のお世話になる状況に陥りました。
今日はそんなお話です。
幻聴が始まる
「お母さん、誰かがずっと私に話かけてくるねん」
娘がそう訴えてきました。
「お帰り~」
「何してんの?」
「それ何なん?」
と謎の人物から話しかけられている内に、不思議に思わなくなり、娘はいつしかその誰かと会話をするようになりました。
幻聴でした。
娘の体調の変化は幻聴から始まりました。
夜中に「死ぬのが怖い」とパニックになり号泣。タナトフォビア(死恐怖症)発症。
「助けて、怖い」
ある日の深夜、娘が号泣しながら私の部屋に入ってきてこう言います。
「私、死んだらどうなるの?」
「お母さんも死んでしまう?」
「どうしよう、死ぬ事を考えたら不安で不安で怖い」
タナトフォビア(死恐怖症)でした。
夜になると死ぬのが怖いと泣く娘をなだめて寝かしつける毎日でした。
強迫性障害を発症
娘の体調はハイスピードで崩れていき、私が未知だった病気の症状がどんどん娘の体に現れ始めました。
就寝する時は、電気のスイッチを何度もつけたり消したり。
コップのお茶を飲む時は、右手で持って一口、左手で持って一口、を交代で繰り返します。
左右のバランスが同じでないと不安になりました。
溺れるのではないかと不安になり水恐怖症になりました。
プールに入れない、湯舟にもつかれない。
コップに口を付けてお茶を飲むことさえ出来なくなりました。
(ストローを使えば飲めるのです)
ひどい時は、シャワーをかかると過呼吸を起こすようになりました。
読書をすると、読み終わったページを何度も繰り返し読むので進みません。
読書が大好きな娘には困った症状でした。
ノートやテスト用紙に書いた文字を、全部書き終わったのに全部消して再び最初から書く、という行為を延々と繰り返します。
勉強は進まなくなりました。
こういった一連の行動が、強迫性障害によるものだと知りました。
学校はいじめを放置、体調はますます悪くなる
小さい頃から仲が良くて、中学では部活も一緒、塾も一緒に通うほどだった娘の友人。
その友人と他の友人達からの嫌がらせは続いたままでしたので、先生も交えて話し合いの場が持たれました。
しかし、いじめ加害者がいじめを認めているのにも関わらず、謝罪を受けることはおろか、先生からは「証拠がないからいじめとして対応しません」と宣言されました。
娘の体調はますます悪くなる上に、肝心の学校は子供を守ってくれません。
そこで、娘を学校には行かせないと決心しました。
私も娘も学校と先生を信頼する事ができなくなりました。
月1で通っていたスクールカウンセラーさんのカウンセリングにも通わなくなりました。
娘は中学2年生の2学期以降学校とは距離を置き、私も娘も学校とは最低限のやりとりにとどめるようにしました。
強迫性障害とは?
娘が発症した強迫性障害には、「強迫観念」と「強迫行為」があります。
強迫観念とは
頭から離れない考えのことで、それが「バカバカしい事」だとわかっていても、頭から追い払うことができず強い苦痛や不安をもたらします。
強迫行為とは
強迫観念から生まれた不安にかきたてられて苦痛や不安を打ち消すための行為。
「やりすぎ」「無意味」とわかっていてもやめられません。
不潔恐怖と洗浄
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯を繰り返す。
ドアノブや手すりなど不潔だと感じるものには触れない。
加害恐怖
誰かに危害を加えたかもという不安が頭から離れず、事件として新聞やテレビのニュースに出ていないか確認したりする。
確認行為
戸締まりを忘れていないか、ガスの元栓を閉めたかなど、ひどく気になり何度も繰り返し確認する。
儀式行為
物の配置が必ず左右対称でないといけない、自分の決めた手順でものごとを行なわないといけないなど、厳密にルール通りにしないと落ち着かず不安になる。
ためこみ
二度と手に入らないのではないか?捨てたらいつか大変な後悔をするのではないか?と不安になり、古新聞や日用品など物を過剰に集め、整理したり捨てたりすることが困難になる。
強迫行為を行うと一時的に不安は解消されますが、しばらくすると「きちんとできていないんじゃないか?」と思いこみ強迫観念が更にひどくなり、それを解消するために更に強迫行為を繰り返すという悪循環に陥ります。
強迫性障害の治療
強迫性障害の治療法は、「薬物療法」と「曝露反応妨害法」(認知行動療法)があります。
しかし、いきなり治療を始めず、まずは強迫性障害とはどういう病気なのかを理解する事から始まります。
強迫行為を繰り返す事で症状が悪化していくことも理解してから治療に入ります。
薬物療法
患者の多くは強い不安感があるので、まず抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)で状態を安定させてから認知行動療法を行います。
最初は少量から始めて体調に合わせて量を調整していきます。
認知行動療法
代表的な治療法は再発予防効果が高い「曝露反応妨害法」で、やらずにはいられない強迫行為をしないで我慢するという行動療法です。
汚いと思うものを触っても手を洗わないで我慢するという感じです。
我慢を続けていくと、強い不安が徐々に弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても大丈夫になります。
精神科を受診
強迫性障害は抗うつ薬の投与が必要になります。
娘はその時まだ中学2年生。
まだまだ発達段階の体に抗うつ薬の投与はかなり慎重にするべきだと考えました。
そこで小児専門の総合病院である、兵庫県立こども病院の精神科を受診することにしました。
初診なら15歳まで受診することができます。
ただし、かかりつけ医の紹介状が必要です。
兵庫県立こども病院の精神科の先生は、初回2時間半という長い時間をかけて娘と私それぞれのカウンセリングを丁寧に行ってくださいました。
他のいくつかの思春期外来や心療内科に問合せをしても、カウンセリングのみの診療や漢方薬の投与はあまり前向きではなかったのですが、こちらは色んな方面からアプローチしてくださり、
- ①投薬無し、認知行動療法とカウンセリングのみ
- ②症状がひどい時のみ頓服を投与、普段は漢方薬
- ③継続的な抗うつ薬の投与
という選択肢を提示してくださいました。
不安症状もきつかったので、②の頓服でしのぐことにしましたがあまり好転せず、③の投薬治療を始めることになりました。
しかし抗うつ薬の副作用は激しく、薬を飲むと腹痛がひどく、体の力も抜けるので体を動かす事が難しくなりました。
また悪夢にうなされるようにもなりました。
娘は服薬を拒むようになりました。
抗うつ薬の怖さも感じたようで、その結果娘は自ら「曝露反応妨害法」の勉強を始めました。
曝露反応妨害法で強迫性障害の症状が軽減
娘はこども病院の担当先生に薦められた本を読み、積極的に曝露反応妨害法を行いました。
曝露反応妨害法のみで治そうと決心をしたようでした。
すると、強迫行為を行う回数が徐々に減っていきました。
また幻聴や死に恐怖を感じる事も少しずつ減っていきました。
期間としては半年ほどかかったと思います。
元々症状の程度は重くはなかったと思います。
あのまま放置していたら、恐らく治療に随分時間がかかったのではないでしょうか。
体調が徐々に回復したおかげで、受験勉強も出来るようになりました。
強迫性障害とタナトフォビアを知る上で役に立った本
娘の症状を理解し治療するにあたり、役にたった本を紹介します。
これらの病気は病院の先生に全てお任せするのではなく、本人や家族も知識を得て理解し協力し、そして実行する事が非常に大切だと感じました。
強迫性障害の治療ガイド
こども病院の先生に薦められた本。
この病気についての知識、症状や治療などが簡潔に完璧に書かれています。
ワークシートで記録をしながら治療を進めていきます。
強迫性障害からの脱出
強迫性障害の教科書的一冊。
強迫性障害の認知行動療法について主に解説されています。
強迫性障害の治療は、本人はもちろん家族など周囲にいる人の協力が必要です。
本人はもちろん、本人以外の人も読んで理解するのにおすすめの一冊です。
森田療法
森田療法は「あるがまま」という心を育てることによって不安障害をのりこえていく日本発祥の精神療法です。
主に対人恐怖や強迫性障害など不安症状に悩みを持つ方の為に書かれていますが、それ以外もうつ症状や不登校など多くの悩みに通じる内容だと思います。
死の壁
なのに「死」に触れる機会の少ない現代。
この本を通してじっくりと死に関して見つめなおすことができます。
おかげで娘はひたすら恐怖に感じていた「死」について納得したようで、この本をきっかけに死ぬのを想像したら怖いと夜中に泣いて私を起こしに来る事がなくなりました。
まとめ~高校に進学し、症状がマシに。そして健康の大切さを知る。
無事高校受験に合格し、高校生になる事ができました。
中学校から解放されたからか、校風が性に合っていたからか、少しずつ体力もつき体調も回復していきました。
最初は慣れない生活で不安になり夜に泣く日々が続きましたが、入学して3か月が過ぎ強迫行為は随分減りました。
今思うこと、それは
健康第一。
学校も会社も体調を崩してまで無理をして通う必要はないと思います。
ストレスなどで一度壊れた体は、元通りになるには長い時間がかかります。
そしてそれまでの普通の生活が困難になってしまいます。
今になってアントニオ猪木さんの
元気が一番、元気があれば何でもできる!
という言葉の重みをひしひしと感じます。
ストレスで病気になったら元も子もないですよ。
辛い場所にいるなら、無理せず逃げて良し!!
では(^^)/
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