子供が不登校になったばかりの頃、どうしたら良いのか分からず悩み、手に取ったのが森田直樹著『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』でした。
不登校関連本の中でアマゾンのレビューがダントツで高評価です。
今現在でも不登校関連本では一位を独走中なのではないでしょうか。
不登校の一因は自分の育て方にあるのかもと悩んでいたので、何とかしてあげたい一心でこの本を購入したのを覚えています。
恐らくこの本を購入した親御さんは皆さん同じ思いなのではないでしょうか。
娘が不登校のまま義務教育を終え、進学した公立高校も中退し通信制高校に通っている今だからこそ、この本に対して感じる事を書こうと思います。
アマゾンのレビューに批判的な内容を書いた方が攻撃にあい内容を訂正したと書かれていたので、ビクビクしながらこの記事を書いてます(^^;)ですが、感じ方は人それぞれだと思うので、私は私の感じた事を正直に書こうと思います。
アマゾンのレビューを読んで購入を考えていらっしゃる方の参考になりましたら幸いです。
1日3分の働きかけ「コンプリメント」で不登校は99%解決する?
この著書で著者は「不登校は保護者の力で再登校を導くことができるし、不登校を未然に防ぐことができる」と主張しています。
その方法は1日たった3分、子供に関わることだけ。
この方法を実践すれば、ほとんどの子供が平均3か月で再登校できると言います。
というのも、著者は「不登校の原因は心の栄養不足」と考えています。
子どもの心の中にはコップがあり、このコップの中には自信の水が入っています。
日常生活の中でこの水を使っているのですが、使って減った水は、周りの人に褒められたり親から愛情を受けたりして、自信の水を補充して満たしている。
けれど、いじめや何かで不適応状態になると、その自信の水をいつもよりたくさん使ってしまう。
心のコップが小さい子どもだと補充できる以上に水を使ってしまい、元の状態に戻れなくなる。
すると不適応状態を乗り越えられなくなり、その結果不登校の状態になる、と言います。
その自信の水を、親が作ってあげなければならない。
その水は1日たった3分子どもに関わる「コンプリメント」で作る事ができる、というのが著者の主張。
コンプリメントとは、子どもの良さを伝えて気付かせること。
子どものリソース(よさ・資源)を毎日三つ以上見つけ、その時その場で、気持ちをこめて伝える、これがコンプリメントです。これで子どもの心に自信の水が溜まれば、ある日突然、活動のスイッチが入ります。子どもは、不登校のきっかけを解決する糸口を自分で見つけ、自分で解決しつつ、登校を再開します。引用元:『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』P41
またコンプリメントの他に以下のような考えを推奨されています。
- 電子機器の禁止
- 登校刺激をする
- 学校は必ず行くもの
- 親が再登校に導くべき
内容に違和感を覚える
不安を煽る内容
プロローグにはこう書かれています。
「今では、学校に戻すことが大切と考えるようになりました。私の考えが変わったのは、再登校後の子どもたちに、社会とのつながりの遅れが見られるからです。体は成長しているが、対人関係やモラルの発達は、不登校をはじめた年齢で止まっているように思われるのです。
例えば小学校で不登校になっていると、体は中学生でも、ものの見方、考え方、行動の仕方は、小学生のままなのです。」
引用元:『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』プロローグ
娘が不登校になったばかりの頃にこの本を読んでも何とも感じなかったのに、娘の不登校に悩む事のなくなった今改めて読み直すと違和感が多すぎて。
私の娘が初めて不登校になったのが小学校5年生の時。
6年生は普通に通えたものの、中学1年の3学期から中学卒業するまで結局不登校のまま義務教育を終えました。
現在、その娘の精神年齢が中学1年生の頃で止まったままかと言うと、むしろ逆で、思考力やモラルはかなり成熟しています。
物事に対する客観的な見方や、周りの多数に流されない自分自身の考えをきちんと持っている娘を、親の私から見てもすごいなと感じる事が多々あります。そして通信制高校に通いながら普通にアルバイトもしています。
ですので、プロローグは偏った考え方に基づいて親の不安を煽っている文章だなと思いました。
が、当時はこんな文章に対してさえ何も違和感を感じなかったんですよね。
不登校はそんな事になるんだな、どうしよう、と不安にしか思わなかったんですよ。
だって不登校は得体の知れないものだったから。
親は自責感にさいなまれる
コンプリメントを始めると、母親の体内に戻って羊水に浸かっているように12時間以上お風呂に入ったり、赤ちゃん言葉でしゃべったり、母親の指をくわえる中学生など「子ども返り」が見られるそうです。
これを「子どもが育ち直しを始めた」と考えているそうです。
また親を試す子どももいるそうです。
それまで自分が承認され、愛された実感が希薄だったために、本当に親に認められているのか試しているそうです。
要するに、不登校のきっかけは様々だけれども、これまで子どもを承認しなかったり愛情が希薄だったりという親の関わり方に不登校の原因があるのだと決めつけている印象があります。
子どもが不登校になった時、多くの親御さんが「私の育て方が間違っていたのかも」と自分の子育てを振り返っているはずなんです。
そしてこの本は藁をもつかむ思いで手に取った一冊だったと思うのです。
こういう内容を読んでしまうと「やはり私の子育てが間違ってたんだ、悪かったんだ」という自責感にさいなまれるのではないでしょうか。
少なくとも私は自分の子育てをとても後悔しました。
が、一時期「褒め育て」という言葉がはやったのもあり、積極的に褒める時は褒め、たっぷり愛情も与えて育てていたと今は胸を張って言えるんですけどね。
電子機器の禁止は心配
娘が不登校の時、友人との唯一の繋がりが「LINE」でした。
そして不登校になって多くの友人たちが離れて行った時、その孤独を埋めてくれるのが携帯でした。
不登校の子どもは確かに携帯を長時間使用する傾向がありますが、メンタルバランスを保ってくれる大きな存在だと私は思っています。
なのに電子機器を禁止しないとコンプリメントは効かないと著者は言います。子どもがメンタルバランスを崩すきっかけになるのではないかと心配しています。
登校刺激は状況を慎重に見極める必要がある
「不安を煽る内容」の項でも引用した通り、著者は「子どもは学校に行くべきだ。親は子どもを学校に行かせなければならない。」という確固たる信念があるので、登校刺激も勧められます。
最近の不登校対応と相反する考えだと思いますが、安易な登校刺激は避けた方が良いと私は思っています。
というのも、登校刺激を行ったせいで私の娘はメンタルバランスを崩し、長期間体調不良に悩むきっかけになったからです。
不登校は子どもが自分の体を守るための本能に基づいた行動。
それなのに無理に登校させるのは非常に危険だと思います。
人生は長いので、ほんの一時期学校に行けなかったからって人生終わりにはなりませんから。
不登校の理由や解決方法を画一的に語るのはおかしい
不登校の原因は千差万別です。
不登校の子どもの数だけ理由があると思います。
だから、不登校に「こうすれば再登校できる」という王道なんて無いはずです。
不登校ってそんなに単純なものでしょうか。
また、著者の2冊目の著書『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する』も娘が不登校真っ最中の時に私は購入しています。こちらもアマゾンでのレビューは高評価となっています。
今読み直すと「不登校は治り」というタイトルでまず違和感を感じます。
病気であるかのようなネガティブなイメージしかわかないからです。
なのにその言葉を不登校支援を生業としている専門家が使用するのに違和感を抱かざるを得ないのです。
不登校は病気なのか??と。
ちなみにこの2冊目『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する』の内容は以下の通りです。
- 8割:コンプリメントで解決した35の事例の紹介(コンプリメントを行った成功体験)
- 8割:自信の水不足による身体症状(不登校の子どもに見られる身体の不調など)
- 2割:コンプリメントがいかに良いのかの説明
コンプリメントを行った結果、娘と私はどうなったのか
本を読んで、自分の子育てが悪かったんだと後悔し反省した私は、行いましたよコンプリメント!
だって真剣に悩んでましたから。
それで娘が学校に行けるようになるのなら、やるしかないよね、親としては。
娘の反応はというと、
「お母さん何?気持ち悪いわ(^^;)」
がくーん、ですよ。
私が本を読んで自分なりにコンプリメントを行った結果どのような変化がもたらされたでしょうか。
- 不登校は相変わらず続く
- 娘の不登校でストレスを抱えている状態にさらにストレスとプレッシャーを自分に課してしまう
- 自分の育て方がやはり悪かったのかと改めて自己嫌悪に陥った
先ほども述べたように、不登校の原因は千差万別。
しかも一つの理由に起因するわけではないように感じます。
娘が最も抵抗を示したのは、日本の学校制度そのものと集団生活でした。
理不尽な校則に異を唱えることもできず、自分たちで行動を考えることもできない、いじめにあっても助けてもくれない、おかしいと思う教師の指導を無条件に受け入れなければならない学校に拒否感を示したのです。
そんな娘にコンプリメントを行っても根本的な解決になるわけがない、と今なら思えます。
が、不登校の真っただ中、とてもそんな風には考える余裕は私にはありませんでした。
最後はコンプリメント・トレーニング、英語塾、鍼灸院に誘導されるオチ
私がこの本を読んでコンプリメントを行ってみたものの、効果はありませんでした。
「私のコンプリメントのやり方が悪かったんだ・・・」
私がそう考えたとしましょう。
大丈夫です。
最後にコンプリメント・トレーニングに誘導されますから。
結局はビジネスか。
と突っ込みたくなりますが、不登校で悩んでいる真っ只中だとそうは思わないんですよね。
トレーニング受けてみようかな・・・。
となるでしょう。
2冊目の『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する』の最後では、コンプリメント・トレーニングだけではなく以下の紹介もされています。
①不登校になると勉強の遅れが心配になります。
そこで英語学習支援として「江戸川英語研究所」を紹介。
②コンプリメントの効果を良くするために、経絡治療とのコラボ研究を始めました。
そこで神戸の鍼灸マッサージ「地蔵院」を紹介。
ホームページをチェックしてみましたが、両方とも経営者が森田姓だったのが引っ掛かりました。
著者の息子さんなのか親族なのか偶然なのかは分かりませんが、何だかモヤモヤする。
コンプリメントを全否定するわけではない
とはいっても、子供の良い所を見つけて褒め伸ばす事を全否定するわけではありません。
不登校の子どもの心のコップを埋めるのは、やはり子どもへの共感だったり認めてあげることだと思います。
ただ、急場しのぎに間違えたやり方で褒めても状況が変わるわけがないのです。
「お母さん気持ち悪いわ」と言われて終了です。
この本を読んでコンプリメントを実践し、子どもが元気に健康的になって学校にも行く事ができれば、最高だと思います。
著者が推奨するやり方が合う方もいらっしゃると思います。
誤解していただきたくないのですが、決して不登校関連ビジネスを十把一絡げに悪いと言っているわけではありません。支援事業は必要だと思います。
ですが、子どもが不登校になり不安に陥った親の心理を煽り巧みに利用したこのやり方を、私はどうしても良いとは思えないのです。
というわけで、私はこちらの本をお薦めしたいと思います。
不登校の子どもだけではなく、子育て真っ最中の方にもお薦めできる本です。
では今日はこの辺で(^^)/
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